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Matthew Bourne's Cinderella レビュー

ロンドンで劇評用に送ったのですが、多分掲載されないのでこちらに載せます!

ちょっとトーンがまじめ。笑

2017/12/24に書いてます。クリスマスイブっ!笑

 

Matthew Bourne's Cinderella レビュー

現在Sadlers wells theatre で上演中のNew adventures Matthew Bourne's Cinderella を観てきた。ダンスでのストーリーテリングがここまで面白いのかと改めて驚きを感じた。

今回の『シンデレラ』はプロコフィエフバレエ音楽を元に作られている。やはりマシュー•ボーンを一躍有名にした『白鳥の湖』や、去年来日公演も果たした『眠れる森の美女』などと同じ形式のものである。

舞台は1940年ロンドンに設定されているが、あのプロコフィエフの『シンデレラ』のオープニングの不安を煽るようなメロディと空襲でボロボロのロンドンの情景が驚くほどマッチしていた。このオープニングの時点で完璧に心を掴まれてしまった。
勉強不足で拙い表現しか出来ず恐縮だが、元々プロコフィエフの『シンデレラ』のスコアはどこか意地悪で変わっていて、それでいてロマンティックだと感じていた。同じプロコフィエフバレエ音楽ロミオとジュリエット』のほうがストレートにロマンティックである。
このプロコフィエフの『シンデレラ』にしかないクリーピーさがマシュー•ボーンによってより強調されている。

1幕のシンデレラとパイロットのパドドゥも、可愛らしさと可笑しさとどこか奇妙さが混在しているし、義理の兄弟たちの存在もとても(いい意味で)気持ち悪い。
強烈すぎる継母も、戦争中の鬱々とした空気の中もはや開き直り生きているどうしようもない女性として舞台を引っ張っていった。
2幕のパーティの場面はまさに享楽的であり、戦争中だからこそのばか騒ぎ感と大人の駆け引きが、シンデレラ=童話の世界を崩している。

しかし何より心に残ったのは12時を回って一気に現実に戻される瞬間である。
このシーンをみてシンデレラは12時過ぎてからが本番なのかと思い知らされた。あのシーンにある意味カタルシスを味わった気がしている。まさにシニカルで現実的でありながら幻想的な名場面である。

舞台セットや衣裳は多少ブラッシュアップはしているだろうが、初演から20年経った今でもファッショナブルで新しく、それだけでも観る価値がある。ロンドンの舞台では珍しく生演奏ではないのだが、だからこそ音楽も聞きやすいし何より出演者の集中力もとても高くマシュー•ボーン的おとぎ話の世界を忠実に再現していた。特にガーディアンエンジェル役のLiam Mowerは身体能力も表現力も突出していた。

クリスマスシーズンでロンドンの街はとても華やかである。このシンデレラも少しダークだが華やかでちゃんと救いもある、大人のホリデーシーズンにぴったりの作品である。